日本の女優で写真を撮り、詩も書く鶴田真由と調香師の沙里氏による、京都東福寺光明院・波心庭で開催された展覧会『水織Mizu-Ori 』。創建600年の禅寺に建てられた名高い枯山水の名庭に、淡路島と琵琶湖にインスパイアされた水紋、石英や淡水真珠から採取した香りとともに創られた「水曼荼羅」。
秋の波心庭の木々や苔、白砂や石に漂う、さりげない香り。写真作品に描かれた神秘で悠遠な波紋。幅6メートルの大作の下に平行して燃える線香。
『水織』のコンセプトについて展覧会の挨拶文にはこう書かれていた。
水を織る
波を観る
石を聴く
心を照す
時を舞う
光明院・波心庭
重森三玲が作庭した波のような心。
今なお問いつづけるような禅寺の枯山水に身を預け、今展のテーマは「水」に導かれました。
私たちがまず訪れたのは
海と湖、ふたつの「うみ」
地図をひらくと 相似の輪郭で向かい合う 淡路島と琵琶湖。
淡路・沼島は古事記における国生みの地。
琵琶は古代湖、幾層の時を宿す水域。
陸と空、陰と陽、動と静、過去と未来、
時空が伸び縮みするような旅路の中で
写真は波長を語り、香は粒子を手繰る。
それらが、あわいに位置する京都で ほどけ、
縦と横という水の糸により ふたたび出逢う。
水面から編まれた詩とともに、
土地に息づく石英や淡水真珠の香りとともに、
呼応から立ち上がる水曼荼羅とともに、
未来の記憶を綴っているのかもしれません
写真と詩、香りを通じ、
本能を響かせて、その先を観る
いま此処で、この瞬間にも、
消えては生まれ、万物が照応している
この世界にそっと坐り、
共に織り上げていけたら嬉しいです。
◼️ 香り作品(一部)
—淡水真珠
65年前、琵琶湖で育まれた真珠
そのものから抽出した香り
—古琵琶湖の土
琵琶湖は幾度もの地殻変動を経て今の地に。
その発祥である奈良県月ヶ瀬
水の層を孕んだ茶畑の土の香り。
◼️ 詩の作品(一部)
—記憶の集積
現在 過去 未来の重なり
時間を外した時間の層
壮大な記憶の集積
混沌から世界が生まれる
—太極図説
陰陽統合の響きは無から有を生み出し
めくるめく紋様を浮かび上がらせる
◼️展覧会概要
日程|2025年10月4日(土)~10月19日(日)
会場|東福寺塔頭 光明院
写真と詩|鶴田真由
調香|沙里
企画|森岡書店
協力|エプソン販売株式会社
鶴田真由(MAYU TSURUTA)
沙里(SARI)